2022年後半のiDeCoの改正、企業型DCとiDeCoの両方に加入できるケースが増加

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三鷹のファイナンシャル・プランナーの伊達です。

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、公的年金(国民年金・厚生年金)に上乗せする形で、自分で掛金を出すタイプの年金です。掛金を出す時や年金を受け取る時に税金の優遇を受けられるメリットもあり、加入者が増えています。

iDeCoの制度改正により、2022年4月には受給開始の上限年齢が引き上げられ、5月には加入可能の年齢が拡大されました。

さらに2022年10月からは、企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入している人が、iDeCoに加入できる要件が緩和されます。そのため、iDeCoへの加入を考える会社員が増えるかもしれません。今回は、2022年10月の制度改正について紹介します。

参考コラム:2022年前半のiDeCoの改正、60歳以降も加入が可能に

改正前、企業型DC加入者でiDeCoに加入できるケース

2022年10月1日の改正前は、企業型DCに加入している人でiDeCoにも加入できるのは、次の要件に当てはまるケースです。

企業型DCとiDeCoを併用できるケース

  • iDeCo加入を認める労使合意に基づく規約の定めがある
  • 企業年金の制度により、事業主の掛金額の上限を次のように引き下げる。
    • 企業型DCのみ:月額5.5万円から3.5万円に引き下げる
    • 企業型DCと確定給付企業年金(DB)の両方:月額2.75万円から1.55万円に引き下げる

iDeCo加入者等のうち、企業年金有りの加入者は約11.9%(2022年4月末時点)と少なく、企業型DCとの併用になるとさらに少なくなると考えられます。

現状、企業型DCに加入している会社員は企業型DCだけを、企業型DCに加入していない会社員・公務員がiDeCoを利用するケースが多いのではないでしょうか。

企業型DC加入者もiDeCoに加入がしやすくなる(2022年10月1日改正後)

企業型DCの掛金額は月額5.5万円(注)が上限ですが、上限まで利用しているケースは少ないでしょう。
(注)確定給付企業年金・厚生年金基金がある場合は月額2.75万円まで。

企業型DCの拠出額は年俸や給与に連動するケースもあり、月額1万円以下というケースもあるのではないでしょうか。税制優遇があるので、自分でお金を出してでも掛金を増やしたいと考える人もいるかもしれません。

2022年10月1日から、企業型DCに加入している人もiDeCoに加入しやすくなりますが、そのポイントは次のとおりです。

  • iDeCo加入を認める規約の定めは不要
  • 事業主掛金額の上限の引き下げは不要

今回の改正で要件が大幅に緩和され、企業型DCに加入している人も原則iDeCoに加入できるようになります。

企業型DCとiDeCoの両方に加入するとき、iDeCoの掛金額はいくらまで可能?

企業型DCとiDeCoの両方に加入する場合、iDeCoにはいくらまで掛金額を増やすことができるのでしょうか?

iDeCoの掛金額の上限は、企業年金の制度によって2種類に分かれます

企業型DCのみの場合

企業型DCのみの場合

iDeCoの掛金額の上限(月額)=5.5万円-(企業型DCの事業主掛金額の月額)
ただし、計算結果が2万円を超える場合は、2万円が上限。

例えば、事業主掛金額が月額2万円の場合は、
iDeCoの掛金額の上限(月額)=5.5万円-2万円=3.5万円
計算結果は上限2万円を超えているので、2万円となります。

また、事業主掛金額が月額4万円の場合は、
iDeCoの掛金額の上限(月額)=5.5万円-4万円=1.5万円
計算結果は上限2万円以下ですので、1.5万円となります。

企業型DCと確定給付企業年金(DB)の両方がある場合

企業型DCとDBの両方がある場合

iDeCoの掛金の上限額(月額)=2.75万円-(企業型DCの事業主掛金額の月額)
ただし、計算結果が1.2万円を超える場合は、1.2万円が上限。

例えば、事業主掛金額が月額5,000円の場合は、
iDeCoの掛金額の上限(月額)=2.75万円-0.5万円=2.25万円
計算結果は上限1.2万円を超えているので、1.2万円となります。

また、事業主掛金額が月額2万円の場合は、
iDeCoの掛金額の上限(月額)=2.75万円-2万円=7,500円
計算結果は上限1.2万円以下ですので、7,500円となります。
ただしiDeCoの掛金額は1,000円単位のため、実際には7,000円となります。

改正後もiDeCoに加入できないケースに注意

改正によって企業型DC加入者も原則iDeCoに加入できるようになりますが、それでもiDeCoに加入できないケースとして次のものがあります。

企業型DCの事業主掛金額が毎月になっていないケース

企業型DCでは事業主掛金額を年単位に設定することも可能です。年単位に設定されていると、企業型DCとiDeCoの両方に加入する場合の判定の問題があるため、iDeCoへの加入ができません。

企業型DCの事業主掛金額が毎月の設定になっているかどうかは、勤務先に確認してください。

企業型DCでマッチング拠出をしているケース

企業型DCでは、事業主掛金額に加えて、加入者自身が追加で拠出することができる「マッチング拠出」が利用できる場合があります。

「マッチング拠出」と「iDeCo加入」は選択制になりますので、マッチング拠出を利用するとiDeCoに加入することはできません。

ただし、企業型DCのマッチング制度があるとiDeCoに加入できないわけではなく、マッチング拠出を利用するか、iDeCoに加入するかは加入者ごとに選択することができます。

現在マッチング拠出を利用している人でもマッチング拠出を止めた場合は、iDeCoに加入することができるようになります。

iDeCoの手数料や最低掛金額にも注意

企業型DC加入者がiDeCoに加入する場合、次の点にも注意が必要です。

iDeCo加入時に注意するポイント

  • iDeCoでは加入時手数料や毎月の手数料の負担がある。
  • iDeCoの毎月の掛金は5,000円以上で1,000円単位。
  • iDeCoの年単位拠出は利用できない(企業型DCと併用する場合)。

企業型DCでは手数料を企業側が負担しているケースが多く、従業員が手数料を負担するケースは少ないと考えられます。一方iDeCoでは、加入時に手数料2,829円(国民年金基金連合会への支払い)、掛金を出している間は、毎月171円(国民年金基金連合会に105円と信託銀行に66円の支払い)に加えて、金融機関への手数料(金融機関により異なる)が発生しますので、手数料負担がある点に注意しましょう。

iDeCoの毎月の掛金額は5,000円以上、1,000円単位となっています。企業型DCの掛金額から計算した結果、iDeCoの掛金額が5,000円未満になる場合は加入できません。

iDeCoでは、年単位で掛金額を設定すること可能です。例えば、1年に1回まとめて拠出するパターンや、毎月に加えて賞与月などに追加で拠出するパターンなどです。しかし、企業型DCと併用する場合は、掛金額の上限の判定の都合から月単位の拠出しかできず、年単位の拠出は利用できません。

iDeCo加入前にライフプランも検討しよう

企業型DCやiDeCoなどの制度は老後資金の形成を目的としているので、原則として60歳までは資金を引き出したり、解約することができません。

そのため、住宅資金や教育資金など60歳までに必要な資金を貯める目的には利用できません。また、60歳までに手元資金が不足しないように掛金額を設定する必要があります。

iDeCoに加入する前に、手元にどれぐらいの資金が必要か、そして老後資金として掛金をどの程度出してよいのかを考えましょう。ライフプランを作ることで、将来の資金の必要性を知ることができ、老後の資産形成をする上でも役に立ちます。

出典:

厚生労働省 確定拠出年金制度 2020年の制度改正
(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/2020kaisei.html)

iDeCo公式サイト 2022年の制度改正について
(https://www.ideco-koushiki.jp/library/2022kaisei/)

iDeCo公式サイト 加入等の概況(令和4年4月時点)
(https://www.ideco-koushiki.jp/library/pdf/join_overview_R0404.pdf)