これからNISAはどう変わる?資産所得倍増プランから分かること
三鷹のファイナンシャル・プランナー(FP)の伊達です。
2022年11月28日の新しい資本主義実現会議で「資産所得倍増プラン」が示されました。
基本的考え方では、「我が国の家計に眠る現預金を投資につなげ、家計の勤労所得に加え金融資産による所得を増やしていくことが重要である」との記述があります。
預金から投資への取り組みはこれまで何度もあったものの、結果的に大きな変化にはなっていません。今回、金融資産による所得を増やすために投資しやすい環境ができることは良いことと考えられます。
金融所得倍増プランの内容から、これからNISAがどう変わるのか紹介します。
(注)記事の内容は2022年11月29日時点のものです。
プランの3つの目標
まず目標として、大きく3つ挙げられています。
- 5年間でNISA総口座数を1,700万から3,400万に、投資経験者を倍増させる。
- 5年間でNISA買付額を28兆円から56兆円に、投資額を倍増させる。
- 中間層を中心とするそうの安定的な資産形成を実現するため、資産運用収入そのものの倍増を見据えた政策対応をする。
プランの7つの方向性
プランの方向性として次の7つが挙げられています。
- 家計金融資産を貯蓄から投資にシフトさせる NISA の抜本的拡充や恒久化
- 加入可能年齢の引上げなど iDeCo 制度の改革
- 消費者に対して中立的で信頼できるアドバイスの提供を促すための仕組みの創設
- 雇用者に対する資産形成の強化
- 安定的な資産形成の重要性を浸透させていくための金融経済教育の充実
- 世界に開かれた国際金融センターの実現
- 顧客本位の業務運営の確保
今回は1番目のNISAについて紹介します。
2024年の新NISAは見直し、現行NISAの拡充へ
NISA制度については5項目あり、概要は次のとおりです。
NISA制度の恒久化
現在のNISA制度は終了時期が決まれており、一般NISAは2023年まで(新NISAで2028年まで延長予定)、つみたてNISAは2042年までです。恒久化することで、将来にわたって安定的な資産形成を行う環境が整備されます。
NISA非課税保有期間の無期限化
現在のNISA制度では非課税の保有期間が決められており、一般NISAは5年間、つみたてNISAは20年間です。無期限化されることで、非課税で保有できる期間に制約がなくなります。
一般NISA・つみたてNISAの投資上限額の増加
現在のNISA制度では年間の投資上限額が決められており、一般NISAは120万円、つみたてNISAは40万円です。
比較的まとまった資産を保有する高齢者世帯や、フリーランスのような定期的な収入ではない働き方をする人が、集中的に投資するために、一般NISAの拡充が必要です。また、つみたてNISAについては12ヶ月を意識したキリの良い金額にする必要があります。
具体的な金額が示されていませんので、今後の税制改正の議論で示されると考えられます。
2024年から施行される新NISA制度の取り扱い
2024年から始まる新NISAは、従来の一般NISAと積立投資を組み合わせた2階建て制度となっています。複雑な制度のため「新NISA」は見直され、検討中のNISA制度の拡充になります。
NISA手続きの簡素化
金融機関や利用者の負担を軽減するため、マイナンバーカードの活用も含めた口座開設の簡素が検討されます。
今後のNISAへの期待は大きい
今回のプランに記載の内容から、今後のNISAへの期待は大きいと感じます。
現在のNISA制度では、制度そのものに期限がある、非課税期間も短い、そのため決して安心して長期投資ができる環境ではありません。非課税期間の終了を意識して売却する人もいますので、必ずしも長期の資産形成に向いているとはいえません。
恒久化、無期限化されるので、本来の長期的な資産形成に向いた制度になることが期待できます。
例えば、30歳からNISAをスタートして65歳まで35年間、NISAで積み立てを続けることも可能になるでしょう。さらに、65歳以降もNISAで運用を続けて、少しずつ運用資産を取り崩すことも可能になるかもしれません。
NISAの非課税期間が無期限になるということは、NISAの範囲内であれば利益には税金がかからないということです。
今後のポイントは投資上限額がいくらに設定されるかです。年間の投資額とあわせて、生涯の投資額が設定されると考えられます。一時期ニュースにもなった老後資金2,000万円が意識されるかのか注目です。
投資教育やライフプランの検討も重要
投資にはリスクがあります。預金と違って、その時の時価が投資した金額より少なくなる「元本割れ」の可能性もあります。長期投資であっても元本割れすることは可能性としてあるので、投資教育についても必要でしょう。
今回のプランでは中間層が議論の対象となっており、一定額の預金や家計の黒字がある世帯が対象になっている点にも注意が必要です。
非課税で投資できるからといって、やみくもに投資するのは避けましょう。将来の家計支出を考えるといくら投資するのがよいのか、現時点でいくら投資に充てられるのかを確認しましょう。まずライフプランを検討し、適切な金額を投資するようにしたいものです。
出典
内閣官房 新しい資本主義実現本部/新しい資本主義実現会議
(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/index.html)
内閣官房 資産所得倍増プラン
(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/atarashii_sihonsyugi/kaigi/dai13/shiryou3.pdf)